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|←back ------------------ 「彼にとっては最善のこと」 ※ぬるいですが性表現が有ります ------------------ フランシスがいつものように連絡もなく恋人のフラットに行くと、昼間から不自然に部屋の窓はカーテンが閉め切られていた。まだ寝てるのかな、規則正しい生活が好きな恋人らしくない。具合でも悪いのだろうか。フランシスは嫌な予感を胸に抱きつつ、恋人の住む部屋へと向かった。 具合が悪くて寝ていたら起こさない方がよいだろうと、合い鍵を使って静かに部屋にはいると、寝室から物音がした。 そっとノブを回す。…ああ、神様。フランシスは息を詰めた。 恋人の、アーサーの、うつぶせになった裸の背中に、アーサーが弟のように可愛がっているアルフレッドがやはり裸でのしかかっていて、熱心に腰を振っているではないか。 フランシスは手に持っていたお菓子の箱をうっかり落としてしまい、その物音にベッドの上の裸の二人はハッとフランシスを見た。 「おいフランシス。ノックくらいしてくれよ。プライバシーの侵害だぞ」 年若く体の大きいアルフレッドが恥ずかしそうにそう言いながら、アーサーの体を隠すようにぴったりと覆い被さった。間男の表情ではなかった。アルフレッドはフランシスとアーサーの関係を知らないような雰囲気だった。アーサーの背中とアルフレッドの胸がぴったり触れたことで挿入の角度が変わったのか自分の恋人は細い悲鳴をあげて息を詰める。 フランシスは、怒鳴ろうか、殴りかかろうか、どうしようかと1秒の間に葛藤した後、結局のところ。 悪い、おじゃまさま。とだけ言って、アーサーの部屋を出た。 不実の現場を見られたアーサーはフランシスに最後まで何も言わなかった。 ------------------ フランシスはアーサーと恋人同士だったはずだった。 正直なところ、フランシスにもまったく不実な所がなかったわけではない。もっとはっきり言うなら、フランシスは浮気性で、そのことではよくアーサーと喧嘩をした。しかしフランシスが浮気性だと言うことはアーサーは恋人になる前から知っていたので、あきらめているふしもあった。あきらめられている、ということにフランシスも甘えていたかもしれない。 しかし、だからと言って自分の恋人も浮気していいとは思っていないのがフランシスのめんどくさいところでもあった。 フランシスは結局その後、バーに行く気にもなれず、ふらふらと自宅に戻った。夕方から一人で酒を飲みながら悶々としていると、携帯電話が鳴った。アーサーからだ。今は取りたくなかったが、この電話を無視すると、アーサーからの電話は二度とかかってこないだろう。そういう恋人なのだった。 「もしもし?アーサー?」 「………」 自分からかけておいて、気まずいのか、アーサーは黙りこくっている。 少しの沈黙のあと、アーサーが息を呑み込むのが電話機越しに伝わった。 「……フランシス、悪りぃ」 「………アルと、いつから?なんで?」 「……ごめん、フランシス…」 アーサーが途切れ途切れに言い訳するには、こうだ。 アルフレッドは、小さい頃はアーサーにべったり甘える可愛い弟だったが、大人になってからは独立して一方的に兄弟の縁を切り、アーサーに酷く冷たくなった。変わらずアルフレッドを愛していたアーサーは傷つき、嫌われているとわかっていてもアルフレッドを構わずにはいられなかった。 ところが、一ヶ月ほど前、自分のことを嫌っているとばかり思っていたアルフレッドが突然やってきて、思い詰めた様子でアーサーを好きだと告げてきた。アーサーを抱きたいとも。どんな形でも自分に頼ってきたアルフレッドを、拒むことなどアーサーには出来なかった。 フランシスという恋人を裏切ることになってしまったが、自分はアルフレッドの望みを叶えるためなら何でもしてあげなくちゃならないんだ…。 いつも理論的なアーサーらしくない支離滅裂な言い訳に、フランシスは髪をかき上げながらため息をついた。 「じゃあ、坊ちゃん、つまり、俺達は別れようってわけね?」 すると、アーサーが涙声になってNo,と言った。 「いやだ。フランシス」 「でもねえ、俺はねえ坊ちゃん。浮気ならまだしも、本気のふたまたかけられて平気なほど、心広くないのよ」 「いやだ、いやだ…」 アーサーはきっと電話口でぼろぼろと泣いているに違いなかった。 「アルはどうせ、一時的に俺を所有したいだけなんだ。どうせすぐ飽きる」 「アルが飽きるまで、俺に我慢しろって言うの?」 「………」 「アーサー。お前ね、一体どうしたいの?」 また電話口で泣きながらNoを繰り返す。子供のような、頼りない声だった。 いやだ。別れるのはいや。どうしてアルが俺なんかを抱くのかわからない。俺はアルを家族として心から愛してるから、もしアルの望みを拒絶して、また手ひどく嫌われたら、とても耐えられない。 でも、俺の恋人はお前だ。俺が恋人だと思ってるのはお前だけ…。 アーサーの涙混じりの言い訳を聞きながら、フランシスも泣きたくなった。 こんな訳のわからないことを言う自分の恋人が心から可哀相だと思った。 ------------------ (2009/07/19) なんか変な話になりました…APH初の話がコレってどうなの。 ------------------ Copyright by HATCH All Rights Reserved. |