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「Cyclops」

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「出られなくなりました、ジェバンニ」
大量のレゴブロックでお城を建設していたニアは、いささか夢中になりすぎていたようだった。自分の座っている場所からコンパスでぐるりと1メートルほど線を引いたように、自分の周りに高い立派な壁を建てた結果、せっかく作ったレゴブロックの城壁をどこか一カ所壊さなければ自分が出れなくなってしまったのだ。
結果、だっこをせがむ子供のように両手をのばし、ニアはジェバンニに言った。
「抱き上げてください。出られません」

ニアという天才少年(実はもう少年というより青年に近い年齢なのだが)とジェバンニは、仕事で出会ってから3年近く経つ。なのだが、一番の成長期のはずなのにニアはちっとも大人になれなかった。身体の成長に使うべき栄養をすべて脳みそに持って行かれてしまうのか、ニアはおそろしく頭が良く…そしておそろしく性質が悪い。

さて、ニアのわきの下に手を入れ、猫を抱き上げるようにニアを軽々と抱き上げたジェバンニは、それこそ猫を抱くときのようにニアのお尻が自分の手のひらに乗るようにし、いとも簡単に巨大な城からニアを助け出した。
ニアはジェバンニの腕の中から、自分の築いた城を斜め上から眺めていた。良い城だ。満足げなニアを見、ジェバンニはしばらくそのままニアをだっこしていることにした。
いつもブカブカのパジャマを着ている上司は、すごく小さくて、軽い。少女のようにつるりとした肌と、思わず指に絡めたくなるフワフワの銀髪。お人形のようだと思うのだが、だが口を開くとがっかりするほど憎たらしい台詞を吐く。
(せめて、もう少し見た目くらいの可愛さが性格にもあればな)

物心ついた頃から成績トップだった孤高の天才少年は、他人と切磋琢磨した記憶がない。誰かを褒めたりしたことも、褒められて喜んだこともない。自分の頭が良いのではなく、周りが馬鹿すぎるのだと普通に本気で思っていた。
だが、そんな彼に唯一のコンプレックスがあるとすれば、この小さな体だった。ニアは自分がやせっぽちで小さくて、一般的な同年代の少年達とはまったく劣る肉体だったことが、内心とても嫌だと感じていた。少しでも体を大きく見せようと大きめの服を着てみたが、逆効果になっていることは本人だけが知らない。
それに、この顔。大きな目につんと上を向いた鼻、痩せた体に反して肉付きの良い頬。まるで健康的な子供そのもので、ニアは嫌だった。
そんなコンプレックスのせいか、ニアはコミック・ヒーローに憧れた。Xメンのウルヴァリンが好きだった。バットマンが好きだった。男らしい精悍な体つき、割れた顎。胸毛。繋がった眉毛。などなど。アメリカ人のことは馬鹿だと思っているが、アメリカン・コミックは好きだ。

ジェバンニとレスターが、ニアは実は好きだった。男らしくて憧れる。口に出して言いたくもないが…彼らは自分の憧れる大人の男にとても近い。
どうやったら彼らのような肉体になれるだろうかと思うが、なんだかとても無理なことのような気もするのであった。
なぜなら、今ジェバンニに軽々と抱き上げられているし、自分はレゴブロックなんかに夢中だったのだから。
彼らとずっと一緒にいれば、すこしは背が伸びるだろうか?たとえば、彼らにずっと触っていたら、背が高くなるDNAが伝染するかも?くだらない。

「もう降ろしてください」
ニアはそう言うとむずがるようにジェバンニの腕の中で身じろぎした。腕の中からおろされた時にずり上がったシャツの隙間からお腹がちらりと覗いた。ぶかぶかのズボンとお腹の隙間に手を突っ込みたい衝動をどうにか堪えたジェバンニに、ニアはまだ気づいていない。

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ニアはSPKの可愛くないアイドル
(2007/4/7)

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